相続手続きを進めるうえで欠かせないのが「戸籍の収集」です。しかし、どの戸籍が必要なのか、どこでどのように取得するのかは意外と複雑。特に、相続人が多い場合や本籍地が遠方にある場合には大きな手間となります。この記事では、相続時に必要な戸籍の種類や取り方、注意すべきポイントを整理し、2024年から利用可能になった「戸籍の広域交付制度」についてもわかりやすく解説します。
1.相続時に必要な戸籍とは
1-1 相続人を確定するために必要な戸籍の種類
相続手続きでは、「誰が相続人であるか」を証明するために戸籍をそろえる必要があります。例えば、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの一連の戸籍をたどることで、
- いつ、誰の子として生まれたか
- 結婚や離婚による身分の変動
- 子や兄弟姉妹といった法定相続人の有無 を客観的に確認できます。
この「連続した戸籍」がそろって初めて、被相続人と相続人の法律上のつながりが証明されるのです。もし戸籍の一部が欠けていると「相続人に漏れがあるのではないか」と見なされ、手続きが進みません。
1-2 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍
特に重要なのが、被相続人の出生から死亡までをすべてつなげた戸籍です。途中で本籍を移していたり、改製原戸籍が存在したりすると、複数の役所から取り寄せなければならない場合があります。
2.戸籍の取り方と手続きの流れ
2-1 本籍地の市区町村役場での請求方法
戸籍は本籍地の市区町村役場で請求できます。
窓口で申請書を記入し、本人確認書類を提示すれば取得可能です。
2-2 郵送請求や代理人による取得の方法
遠方の本籍地から取り寄せる場合は郵送請求が便利です。必要なものは以下のとおりです。
- 請求書(各市区町村のホームページからダウンロード可能)
- 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)
- 返信用封筒(切手を貼付)
- 本人確認書類のコピー
市町村によって様式や手数料が異なるため、事前に必ず本籍地の役所HPで確認することが大切です。
代理人に依頼する場合は委任状も必要になります。
3.戸籍収集の注意点
3-1 改製原戸籍・除籍謄本が必要になるケース
戸籍制度の改正で様式が変わると「改製原戸籍」が作られます。
また、すでに戸籍から全員が抜けている場合は「除籍謄本」となります。これらも出生から死亡までのつながりを確認するためには欠かせません。
3-2 相続人が抜けないためのチェックポイント
出生から死亡までを連続して確認すること、兄弟姉妹や再婚相手の子どもなども含めて調べることが大切です。途中で空白がある場合は相続人に漏れが出る可能性があり、金融機関や法務局で相続手続きを受け付けてもらえません。
3-3 戸籍を取得するタイミングの注意点
戸籍は「いつ取得するか」も重要です。
- 相続人の現在戸籍
相続開始(被相続人が亡くなった後)に発行したものを提出する必要があります。亡くなる前に取得したものでは、相続人の記載に反映されていない場合があるため注意しましょう。 - 被相続人の戸籍
出生から死亡までを連続して証明できればよく、古い時期に取得した戸籍でも利用可能です。ただし、最後の除籍謄本(死亡が記載された戸籍)については、亡くなった後に発行した最新のものをそろえる必要があります。
この違いを理解しておくと、何度も取り直す手間を防げます。
4.広域交付制度の活用法
4-1 広域交付でできること・できないこと
2024年から始まった「戸籍の広域交付制度」により、本籍地以外の役所でも、全国の戸籍を取得できるようになりました。
- 取得できる:現在戸籍・除籍・改製原戸籍
- 取得できない:一部の特殊な戸籍(電算化前の古い戸籍など、一部制限あり)
つまり、相続時に必要な「除籍謄本」や「改製原戸籍」を広域交付で取得できるケースがあります。
相続以外でも利用可能で、例えば進学や婚姻の手続きで戸籍が必要な場合にも使えます。
4-2 利用時の注意点(対象者・必要書類など)
広域交付を利用できるのは「本人・配偶者・直系親族」に限られます。
- 取得できる:本人、子が親の戸籍を取る、親が子の戸籍を取る
- 取得できない:兄弟姉妹、叔父・叔母、いとこ などの戸籍
例えば「亡くなった兄の戸籍を弟が広域交付で請求する」ことはできません。
兄弟は直系ではないためです。
また、広域交付は窓口請求のみで、郵送や代理人申請は不可。本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)が必須です。
5.効率的に戸籍を集めるために
5-1 行政書士や専門家に依頼するメリット
戸籍収集は煩雑で時間がかかるため、専門家に依頼すると漏れや間違いなくスムーズに進められます。相続人が多い場合や戸籍が複数の自治体に分かれている場合には特に有効です。
5-2 自分で集める場合のスケジュール管理法
自分で収集する場合は、役所ごとにどの戸籍を請求したかを一覧にして管理することが重要です。
郵送請求は往復で1〜2週間かかることも多いため、余裕をもって動きましょう。
相続に必要な戸籍の取り方と注意点を理解し、広域交付制度を正しく活用すれば、戸籍収集はずっと効率的になります。まだ親がご存命であっても、娘が親の戸籍を最寄りの役所で取得することは可能(直系親族のため)です。相続時だけでなく、日常の手続きでも役立つ制度として覚えておくと安心です。
相続に必要な戸籍は「誰が相続人か」を確定するための大切な書類です。特に被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍と、相続人の現在戸籍を正しくそろえることが重要です。さらに、2024年に始まった広域交付制度を活用すれば、戸籍収集の手間を大きく減らすこともできます。
戸籍の取り方や注意点を理解しておくことで、相続手続きはぐっとスムーズになります。
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